2025年12月19日金曜日

こんにちは。
大工大航空部の新見です。

もう見飽きた名前かもしれませんし、相変わらずユーモアに富んだ文章でもなければ、話題はDiscusばかり。
「またお前か…」と思われても、それはもう仕様ということでご了承ください。

さて今回は、11月末に行われた“大工・岐大 木曽川合宿”の様子をお届けします。


11月22日 合宿初日

合宿初日といえば、
「なかなか発数が回らない」
「成果が出にくい」
というのが定番ですが……今回は違いました。

まずは朗報から。

3年・立脇、ASK23へ移行!

3年の立脇がASK23への移行を果たしました。
同期として、これは素直に嬉しい出来事です。

僕が練許生の頃は、ソロで滞空なんて夢のまた夢でしたが、彼は違います。
沈下の少ない場所を選び、バリオが少しでも良くなれば速度やバンクを細かく調整し、着実に時間を稼いでいく。
「本当にもってるな」と横で思っていました。

(立脇 23移行)


“浮かない”と言われる木曽川

「木曽川は浮かない」

これはもう定説レベルで言われています。
実際、私自身もシーブリーズで少し滞空したことがある程度で、
「本当にここでサーマルソアリングできるの?」
と、ずっと半信半疑でした。

しかし前日、mtr先輩がふと一言。
「明日は浮くかもしれないな」

……その言葉を、当日になって思い出します。

朝からDiscusにたくさん乗せていただきましたが、地上の空気はまだ冷たく、サーマルは小さく散発的。
11時ごろになると空気が動き出し、ポコポコとした反応が出始めます。
教官たちも
「もう少し温まれば…」
という雰囲気でした。


まさかの優先搭乗

Discusがラインナップされ、搭乗者はmtrさん。
朝から4発も飛んでいた私は、完全に“いってらっしゃい係”のつもりで横に立っていました。

すると、No.1にラインナップされた151に搭乗していたwki教官が、キャノピー越しに一言。

「新見、飛んで来い」

……え?

パラシュートを背負って準備していた先輩を差し置いて、
後輩の私がDiscus、mtrさんが23へスライド。
ありがたすぎて、若干申し訳ない気持ちを抱えつつ発航します。

上空に行くと、先に出ていた557と151がすでに滞空中。

無線が飛び交います。

「大工Discus 557 こちら460 バリオ0」
「大工Discus 151 RW南側上空 高度720 −2」
「オールステーション 木曽川ピスト 特別訓練空域解放」

上も下も、完全に“新見サポート体制”。
東海大橋をトリガーに、北へ伸ばしてサーマル探しに出ます。


サーマル、来た。

予想的中。

0〜+1.5m/sのサーマルを、30度バンクで必死に探ります。
5分前に離陸した151が「720m」と言っていましたが、
「チートでしょ」
と心の中でツッコミ。

150mほど高度を稼いだところで空域が気になり、早めにブレイク。
再度北へ。

すると沈下に叩かれます。

「まずい、増速だ」

……と思った瞬間、横ずれに気づき修正。

+2〜3m/s。

「はーい、こんにちは」

オーディオバリオが
「プー、ピーピーピー」
と騒ぎ出し、心拍数も一緒に上昇。

先ほどとは別物の、明らかに強いサーマル。
ゆっくりですが、1030mまで駆け上がりました。

後から上がってきた複座機の方が上昇率が良く、その下に入れてもらいます。
美味しいサーマルをいただきながら、頻繁にクリア確認と他機警戒。

ふと上を見ると、太陽に隠れる557。
空で太陽を使ったかくれんぼをされると、眩しくてたまりません。

最後までコアにきれいには入れませんでしたが、
単独で1000mまで上げられたこと
そして人生最高高度を自分の手で更新できたことは、本当に嬉しかったです。

ただし、これは決して一人の力ではなく、
一緒に飛んでいた教官機、そして地上からの無線サポートがあってこそ。
改めて感謝しかありません。


最高高度の、その先へ

これまで複座でも800m程度だった私にとって、
1000mから見る景色は、今までで一番きれいでした。

……が、快適な時間は長く続きません。

空域の関係で移動を強いられ、

「プーーーーーー。」

嫌な音が続きます。

北へ伸ばしても、先ほどの場所に戻っても、もう何もない。
東海大橋上空でも−2m/s。

気づけば高度540m
しかも、まだフライト開始から40分程度。

wki教官からポジション情報をもらい、ウインチ上空からRWを探ります。
バリオが少しずつ改善。

……が、0.5止まり。

それでもRW上空でじわじわ粘り、750mまで回復
ここでようやく1時間達成!

「やっとか…」と内心安堵しつつ、
まだ飛べるだけ飛ぶつもりで旋回を続けます。

再び最初に上がった経路を攻めると、
サーマルの“残骸”がわずかに残っていました。
丁寧に(本当に少しずつですが)拾い、950mまで再上昇


まだ浮いている人がいる

雲下を試したり、狭い空域で北に伸ばしたりしましたが、
もうサーマルはなさそう。

そういえば、私の後を追って23で飛んだmtr先輩、
まだ浮いていたはず……。

他機警戒をしながら探しますが、上には見当たりません。

「いないなー」

と思いながら街を見渡すと、
白く光る何か。

いました。mtr先輩です

「大工Discus 447 高度400 バリオ0」

……というわけで、
残念ながら二人ともここまで。

最終的に1時間33分のフライト。
数字だけ見れば「まあまあ」と言われるかもしれませんが、
自分にとっては間違いなく忘れられない一本になりました。

木曽川で、
Discusで、
自分の判断で高度を稼ぎ、落とし、立て直し、そして粘る。

この一連を経験できたことは、何よりの財産です。
改めて、空で支えてくださった教官、
地上で無線を入れてくださったクルーの皆さんに感謝しかありません。

Discusで初めて空を飛んでから、まだ3週間
それでも気づけば、Discusでのフライト時間は5時間超え

3週間連続の合宿がすべて晴れ、
教官たちの的確なサポートがあり、
そして少しの運にも恵まれ――
またひとつ、自分の中に「経験」を積み上げることができました。

こうして振り返ると、
一つひとつのフライトが決して当たり前ではなかったと、しみじみ思います。

……なお、この二日後。
私はまだ知る由もありませんでした。

この合宿の余韻に浸る間もなく、
急に体調を崩し、インフルエンザに倒れることになるとは。

人生、上がるときもあれば、
一気に沈下に叩かれるときもあるようです。

(次は健康面もマネジメントします。)